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□だらたまご 2023/11/5 「文豪やきそば【読書】」
というのも、最近読んでいるのは小説や読み物系ではなく、漢検の参考書だとか、または 言語学習の本だとかなので、感想も何もその内容を学ぶことに意味があるやつです。 私は元来小説を読むという事があまり好きではなく、感想文も極めて短いものを選んで 書いたくらいなのですが、今回紹介するような面白系の本は好きですし、あるいは今日 ちょっと買ってきた雑学系の本だとかも好きなので、そういうのも感想文にできるなと 思い至ったので今回も感想を綴っていこうと思います。 『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』を読んで それぞれの人間の顔が違っているように、言語を扱う老若男女はそれぞれに特徴的な 言葉の扱い方、比喩の方向性、或いは語尾など、細かな違いがあるものだ。 特に小説家や評論家などの文筆を生業とする人間や、ミュージシャンや詩人、あるいは 個人ではなく雑誌や新聞の文体というものは特徴的であることが多い。 文体のみならず、こういう所でこういう言葉を足す、こういう所でこういった内容に繋げ 理論を飛躍させる、いわばテレビでよく見かける「モノマネ」で誇張されるような大きな 特徴があると、一目見ただけでそれが誰によって紡がれたものかわかる事さえある。 本書『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』は、そのような特徴的な文を 紡ぎだす個性溢れる作家や音楽家や詩人、或いはインタビュー記事などでの振舞いが 特徴的な著名人や新聞社や雑誌、とにかくそれぞれの特徴をコピーしつつ、焼きそばの 作り方を書いていくだけの単純な内容である。 本書で表現されている100人分――人ではないものも含まれているが――の中には、 それぞれの最も有名な作品の一節を引用しつつ表現されているものがあるので、元の 作品がわかれば誰を表現している文か判断できるが、私が注目したのはそこではない。 正直な話、その質が極めて高いかと言われると疑問であるし、多くのものは、元となった 作品がはっきりとわかるような表現をしているものであるから、これらはモノマネでいう 「〇〇がもし〇〇を歌ったら」という形というよりも、「〇〇の替え歌」であるとか、 あるいはコロッケ氏のような「癖や論理飛躍を極端に誇張した表現」に近い。 特に詩に関しては本当に元の文章に無理やり焼きそばを捻じ込んだものが多いし、小説も それぞれの有名な作品の表現や流れをそのまま焼きそば化したようなものが多い。 全体的には元となった人々の癖をギャグ的に楽しむ、そういった本である。 この本の最も面白い点は、焼きそばの作り方という突拍子もない題材を真面目に書くと いう視点や、名作を捩った表現ではなく――そこも面白いのだろうが――多くの文体が 一堂に会し、その比較ができる、という点であると私は感じた。 私はこれらの元となった人の文章をすべて読んだことがあるわけではないため、全てが 本当に似ているのかは判断ないが、少なくとも私が読んだことがある人や媒体の表現は なんとなく「似ている」と思うことができた。 それはすなわち、文章の個性というのは、人の声や顔と同じように、誰かを判別するに 足るほどの特徴があるのだと、この本を読んで私は強く感じたのである。 そして同時に、私自身が文章を紡ぐことを趣味として作品を発表しているがゆえに、 私自身にこうした「文章の個性」が存在しているのか不安になった。 実際のところ、別サイトで更新していたころに私の掌編ホラー小説へのレビューで、 「気味の悪さ」は最後に刺す、というレビューを頂いたことがある。 これはいわば私の掌編の特徴として、一通りの怪奇現象が起きて完結したかと思った ところに最後の最後で「怪異はまだ終わっていない」と言わんばかりの恐怖の再来を ほぼ必ず入れる点を評価していただいたものであるが、ある意味ではこれ自体は私の 「癖」であり、本書で紹介されている100の文体に大いに含まれているような独特な 癖そのものの一つであると考える。 一方で、それ以外の地の文に自分らしさがあるかと問われると、それは聊か疑問である。 しかし少なくとも、この本で紹介されている文体の中でも、特に文章を紡ぐことを生業と する小説家達の独特な文章は、焼きそば化されているためにシュールなものとなっている 一方で、文体自体は非常に魅力的に感じたものである。 そしてその個性や魅力こそが、元となった人々が成功者となった理由の一つなのだろう。 私も文章を書き表現する一人として、私自身の特徴となるような文章を紡いでいけるよう 日々研鑽を重ねていきたいと、そう感じた。 ……というわけで、まあ乱雑で言いたいことが散らかった文章ではありますが、感想を 書かせていただきました。 ざっくばらんに感想をまとめるなら「ある意味面白い」という感じ。 ま本当にだれだれのファンとかいうのがある人は、その推しがギャグ的に扱われている タイプの本なので、それが嫌な人にはお勧めしませんが。 今回読んだ本はこちらから。 だらたまごに戻る ▲ページの上部へ |