![]() ![]() |
|
![]() ▲トップページ
![]() ▲みずちあきらについて
![]() ▲BGM、モデル等配布
![]() ▲外部リンク
![]() |
![]() 『湖の写真』
![]() 高校時代の同級生から、メールで1枚の写真が送られてきた。彼とは学校でもほとんど話した記憶はない。修学旅行の時にたまたま同じ班になって、その時に少しだけ会話をしただけである。写真の共有の都合で連絡先を教えていたが、それから7、8年ほど経つ今に至るまで連絡を取ったことはない。そんな彼から、特に何のコメントもなく、ただ1枚、不思議な写真が送られてきたのである。 それは、山奥の湖の写真であった。夜明け直後か夕方かはわからないが、湖面は太陽の光で赤く染まっていて、黒々とした水と沈みかけの――或いは出たばかりの――太陽の赤さと合わさって、まるで地獄の血の池のように見えた。山の木々もまた同じように赤く染まっており、湖面と周辺の山々、そして空を含め、写真はほとんど黒と赤で構成されている。見ているだけで何かじっとりとした重いものを感じるほどに、とにかく不気味な写真であった。それだけではない。その湖面の縁の、少し手前の位置に、一人の少女が向こうを向いて立っている。赤いワンピースに長い黒髪、肌はこの写真の中で唯一、白く目立っている。明らかに太陽の色を映しておらず、少女は明らかに写真から浮いていて、まるで後から合成したかのように見える。湖、山、空、そして少女。この写真に写っている全ての要素が、美しさを備えていて、そしてそれと同時に、言葉に表しようのない潜在的な恐怖心を引きずり出すかのような圧を孕んでいる。 不快であった。別に彼と仲が悪いわけではないが、ほとんど話したこともない相手に、このような不気味な写真を送り付けてくる彼に、私はそこはかとない不快感を覚えた。送ってきた理由も、この写真の正体も何も語らぬままに、ただ私のスマートフォンにこの写真を表示させてきた彼が、どうにも不快で、そして同時に、私は彼に非常に強い興味を抱いた。この得体のしれない写真を、いったいどこで撮影したのか、あるいはどこで拾って来たのか、何を思って私に送ってきたのか、何を私に訴えようとしているのか、それがとても気になった。色々と聞いてみたくて、私は受け取ってすぐ彼に返信を送信した。しかし、連絡先のメールアドレスは存在しないという通知だけが帰ってくるのみであった。 別に、速やかに写真を削除しても良かった。しかし、その写真のことが気になってしまって、どうしても削除する気にはなれなかった。それどころか、どうしてもこの写真の正体を突き止めたくなって、色々に調べ始めた。慣れないグーグルアースを色々といじくりまわしながら家の周辺の湖をしらみつぶしに検索してみたり、画像を色々に編集ソフトで加工して不自然な点を探したり、とにかく大した知識がないにもかかわらず、色々な物を試した。しかし、私は別に探偵でもないし、そういったゲームの知識があるわけでもない。案の定、私自身の検索能力では、答えにたどり着く事は出来なかった。 色々と考えても埒が明かなかったので、色々と調べてみると、AIに画像について尋ねられるらしいことがわかった。どうせ大した答えは得られないだろうが、もしこの画像がインターネットにあるものならばそれが分かるかもしれない。少しだけ期待しつつ、私はAIに画像をアップロードして、「この写真は何?」と記載して送信ボタンを押した。 数秒後、AIからの回答があった。そしてそれを見た瞬間に、私は急いでAIの画面を閉じ、フォルダから先ほどの写真を消した。スマホの画面をすぐに閉じて、私は布団にくるまって、恐怖に震えた。AIの回答は、それほどまでにあの画像の第一印象からは考えられないもので、あまりにも恐ろしいものだったのだ。 「この写真は、男性の顔面を大きく映した画像です」 ![]() あおたま怪談に戻る ▲ページの上部へ |