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□所有測定機器と校正の考え方

 私は一応測定を含めた管理が本業なのですが、いろいろとものづくりや修理をするに
 あたりまして、一応自分自身でもいくつかの測定機器を所持しています。
 そんなわけで今回は、私が所有している道具のざっくりとした紹介と、そして
 寸法を保証するということはどういうことかなどをかいつまんで解説いたします。

測定機器
▲私が所有している測定機器(定規などもあるがさすがに割愛)

 まず、私が持っている道具についてちょいと説明いたします。
 もともと私は時計好きということもありまして、その各寸法が必要になったり
 またその他いろいろと確認したりすることもあるので、細かいものが測れる道具を
 いくつか所持しております。
 実はこの上の写真にある4つの測定器ですが、普通に測定するだけなら
 ノギス1本で事足ります。
 それ以外を所有している理由はひとえに「ノギスを最後に買ったから」なのですが
 じゃあなぜマイクロメーターというものが必要になるかなどのちょっとした解説も
 交えながら紹介していきます。

ノギス
▲ノギス

 まずは私が仕事でも日常でもこれしか使いたくない、というくらいに愛用しているノギス。
 仕事のほうはまあ当然会社が購入している道具なのですが、何しろミツトヨは神。
 動きも極めてスムーズですし当然のことながらガタもないです。
 いろいろ触った感じからしても、動きのスムーズさや扱いやすさはミツトヨが頭一つ
 とびぬけている感じがしますね。
 (それ以外のものが比較的安価なものというのもあるかもしれませんが)
 測定可能範囲は0.01ミリ単位で150ミリ前後まで。
 写真右下についている円盤状の部分を転がすように操作することで微調整が可能。

マイクロメーター
▲インサイド・アウトサイドマイクロメーター(マイクロメータとも)

 上記の2つはマイクロメーターと呼ばれる道具の1種です。
 ノギスとマイクロメーターの違いを一つ上げるとすれば、まずマイクロメーターの場合
 ものによっては副尺を利用することで0.001ミリまでの測定ができるということ。
 (上記写真の2つについては0.01ミリまでの対応です)
 そして、ノギスと違う最大の点は「一定の圧力で検査ができること」が挙げられます。
 ノギスの場合は当然指で操作するということもあり多少なりとも圧力が変動しますが
 マイクロメーターは写真下の機械でいうところの黄色い部分がラチェットになっており
 ここである程度の圧力が加わるとラチェットが発動してそれ以上行かなくなります。
 当然、思い切り勢いよく回すと誤差は生じますが、ゆっくり回している分には
 誤差が緩和されて正確な測定ができる、という特徴があります。
 また、写真上側のアウトサイドマイクロメーターは先端部が丸くなっており、
 ノギスと違って内径測定時に誤差が生じにくいという利点もあります。
 というのも、ノギスのインサイド側は両側にわずかな平面があり、小さいものだと
 それが誤差を生じさせてしまうからです。
 また、外径マイクロメーターは例えば「一段入ったところの厚さ」のように
 ノギスでは届かない場所を測定することができるのも利点の一つです。

 マイクロメーターの難点はその測定の幅で、写真下の物では0ミリー25ミリ、
 写真上のものは5-30ミリと25ミリずつしか測定ができないというところです。

デプスマイクロメーター
▲デプスマイクロメーター

 この写真のものはデプスマイクロメーターと呼ばれる道具で、深さを測定するものです。
 ノギスでも深さを測定することができますが、ノギスの場合はその性質上
 「ある程度の幅がある場所からの深さ」を正確に測定することは難しいです。
 それというのも、ノギス端面にある平面部はごく短いため、大きめのRからの深さや
 測定したい深さの基準面同士が離れている場合は測定が困難になるのです。
 そこで活用されるのがこのデプスマイクロメーターで、この平面部を突き当てて
 メモリを回すと、中央から棒が出てきてその飛び出し量で深さを測定します。

□測定の妥当性とは

 冒頭に「校正」という単語を出しましたが、これはごく簡単に説明すると
 「その測定器が正しいことの証明」(ただしこの説明には誤解を含む)です。
 より深く説明すると、校正というのはその測定器が「示すべき寸法」に対し
 どの程度誤差があるかを「公的に保証されたもの」と比較し、その誤差値をもって
 その測定器の示す数値の妥当性を検証・保証することです。

 例えば市販のノギスを購入したとして、それの測定値が正しいかどうかを証明するのは
 それ単体でできることではなく、必ず何かと比較しなければなりません。
 そこで、標準器と呼ばれるより精密に作られたものを測定し、その結果を確認することで
 その標準からどのくらいずれているかを確認するのです。
 しかしここで問題なのが「より精密な標準器は何によって証明された?」という点。
 そうして上へ、上へと校正をたどっていくと、結果的に公的機関へとたどり着きます。
 ここで証明されたものと、皆様の手元にあるものがつながって「校正」が完結します。
 それを証明するのが「トレーサビリティ証明書」などと呼ばれる書面で、これによって
 この機器は公的に管理されたものとの比較がちゃんとできていますよ、ということが
 証明されることになります。
 たとえば「精密ノギス」と書いてあったとして、じゃあ大丈夫だろうと購入したとしても
 その測定器の正当性はトレーサビリティをもってのみ証明されるものであり、
 自分で校正された基準器で校正を行うか、あるいは業者に依頼するなどして証明しないと
 それはあくまで「参考値」を出すものにしかならないというわけです。

 なお、校正とは「確認」であり「修理」ではありませんし、「正確性の証明」といっても
 完璧に正しいことを証明するものではありません。
 その測定器が生じさせているズレを認識し、その「器差」を確認することで
 その測定に妥当性があるかを判断する指標となるわけです。
 例えば公差(認められている誤差範囲)が0.02ミリしかないのに、測定器の誤差が
 0.03ミリあったとしましょう。
 それで測定しても、できあがったものは本来必要な値と0.03ミリずれているわけなので
 それでは困る、というわけです。
 一方でその測定器で測定するものが0.5ミリの公差レンジがあったとすれば、その
 測定器でもおおむね問題はありませんが、例えば公差ぎりぎりであった際には
 「この測定器は基準より0.03ミリ大きく出るから不合格だろう」などと判断できます。
 つまりはその測定器の必要性や妥当性に合わせて合格範囲を決めることができるので
 基準を決めたうえで合否を判定し測定器自体の妥当性を判断することができますし、
 ぎりぎりの数値が出た場合に本来との差を比較できるということです。
 ※実際公差0.02ミリなら0.001ミリ範囲が測れる測定器が必要ですしそういうのは
  基本的に誤差も0.001ミリ単位になることが多いです。
  公差と測定器と有効数字とかの話は割愛。

 では、校正は1度やればいいかというと、当然そういうことはありません。
 校正は「測定器を使う前と後でその間は問題ないと推定する」ための作業です。
 例えば摩耗や損傷により徐々に測定値が変化していくということがありますので、
 定期的な校正が必要となります。
 そして、校正というのは「今」の証明です。
 つまり、「今」その機械があっていて、1年後に不合格になった場合は
 その1年の間の測定値は保証することができないということです。
 例えばケチって校正期間を「機器を更新するまでにしちゃおう」と10年とした場合、
 6年目で壊れたらそこまでの6年は保証ができなくなってしまうことになります。
 だからこそ、使用頻度に応じある程度の期間で周期的に校正する必要が生じるのです。
 また、測定器を廃棄する際も「そこまで」の保証のために校正が必要になります。

 さて、そういうことで説明してきましたが、私の所有するこの4本は校正していません。
 あくまで「測定ってこういうものですよ」というご紹介です。
 (私が必要とする精度はせいぜい0.2ミリ刻み程度ですし)
 もっと詳細な測定や校正に関することも書くことはできなくもないですが
 そこまで書いても別に意味がないので本日はここまで。
 詳しく知りたい方はキーエンスやミツトヨなどのサイトでも校正や測定について
 いろいろに書いてあったりしますのでそちらを参照ください。

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